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2013年10月

2013年10月28日 (月)

これであなたも妊婦健診が出来る!?(セリフ集8-1)

「それではお腹を拭いてから、・・・。」に続くセリフには、妊娠週数によりオプションがあります。

その1
「それではお腹を拭いてから、おりもの検査になります。」
この後は、内診台に上がっていただき、腟周囲の細菌培養の検査をします。当院では妊娠34週くらいで行い、主にB群溶血性連鎖球菌 の有無を見ます。

B群溶血性連鎖球菌はB群連鎖球菌や B群溶連菌 と呼ばれGBSと略されます。約20%の正常妊婦さんの腟、直腸内に常在している細菌です。常在菌なので妊婦さん本人には悪さはしませんが、産道で赤ちゃんに感染すると致死的な敗血症の原因となることがあります。B群溶連菌が検出された妊婦さんは感染予防を行うのが望ましいとされています。

(江坂)


2013年10月21日 (月)

これであなたも妊婦健診が出来る!?(セリフ集7)

もうすぐエコー検査終了になります。
「今日の赤ちゃんの体重は〇〇〇gくらいです。大きさもちょうど良くって、他に見たい所など無いですか?」
と、言いながら、赤ちゃんの体を最終チェックします。大きさがちょうど良くない場合は、他の検査を追加する場合があります。ちなみに、この段階でその日に見える物は大体見ているので、他に見たい所を追加されると、ちょっと困る事があります。

「それではお腹を拭いてから、お話になります。」
と言いながら診療席に戻り、カルテに入力しながら健診のまとめのお話をします。血圧や尿検査の結果もチェックして、次回受診の指示をします。

血圧と尿検査のチェックは重要で、妊娠高血圧症候群の兆候が無いか調べます。以前は妊娠中毒症と呼ばれていた病気で、たん白尿と高血圧が主な症状です。胎盤の働きが悪くなるため、低出生体重児になることが多く、早産、死産の原因にもなります。妊娠高血圧症候群と呼ぶよりは妊娠中毒症と呼んだ方が話が通じ易いので、未だに中毒症の呼称を用いる事もあります。

「それではお腹を拭いてから、・・・。」に続くセリフには、妊娠週数によりオプションがあります。

(江坂)

2013年10月19日 (土)

雁渡り

秋も随分と深まってきました。苫小牧の秋の風物詩と言えば、ウトナイ湖の渡り鳥ですね。
Simgp7360
日暮れ時にねぐらへ移動するところを撮影しました。マガンとヒシクイの混成飛行隊です。

ウトナイ湖の近況は、
ウトナイ湖サンクチュアリ 最新自然情報
http://park15.wakwak.com/~wbsjsc/011/daily/dailyindex.html

でチェックできます。

(江坂)


2013年10月17日 (木)

これであなたも妊婦健診が出来る!?(セリフ集6)

昨日の暴風雨は大変でしたね。冬のような寒さでもあり、市内でも雪が降ったりしなかったでしょうか?

セリフ集エコー編はもう少し続きます。

「羊水の量もちょうど良くて、胎盤の位置も異常なしです。」

羊水の量がちょうど良く無い場合は、羊水量を計測する場合があります。胎盤の位置により、母児の生命が危険になる事があります。

胎盤の位置異常で危ないのは前置胎盤という病気です。胎盤が子宮口の一部または全部を覆っている状態で、普通分娩(経腟分娩)は出来ないので帝王切開が必要になります。妊娠中に突然大出血する事があり、帝王切開も通常より出血リスクが高いので、基本的には高次施設での管理を要します。

「顔はこんな感じで、写真撮っておきますね。」
口唇口蓋裂など顔面の異常の有無を見ます。なるべく顔写真を差し上げたいのですが、赤ちゃんの向きにより顔写真が撮れないことも多いです。赤ちゃんの顔写真が欲しい方は、4Dエコーがよりリアルに写るのでお勧めです。希望の方は、健診の予約を入れる時にお問い合わせ下さい。

最近は赤ちゃんの立体データを元に立体模型を作るという試みも為されていて、
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http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-1195703/The-stunning-new-technology-allows-parents-hold-life-size-model-unborn-child.html
まだ気軽にお勧めできるお値段ではないのですが、3Dプリンターも身近になってきたので、コスト面での折り合いが付いたら当院でも導入したいと思っています。

(江坂)


2013年10月15日 (火)

これであなたも妊婦健診が出来る!?(セリフ集5)

セリフ集の続きです。

「これがお腹の真ん中辺で、大きさを測って行きます。」
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と、言いながら頭の横幅とお腹の断面積を計測します。更に太腿の骨の長さを測ると、赤ちゃんの推定体重が算出されます。あくまでも推定なので、1−2割の誤差が出ます。また、横隔膜、胃、腹水、腎臓、腸など、腹部の臓器に異常が無いかチェックし、脊椎や骨格の病気の有無も確認します。

「こっちが太ももの骨で、性別はお聞きになっていますか?今日も◯の子ですね。」
と言いながら、性器、泌尿器の異常の有無を見ます。性別が見れるとは限りませんし、たまに性別を間違う事もあります。前述のように、性別診断には微妙な問題が含まれています。

エコー編はもう少し続きます。
(江坂)

2013年10月13日 (日)

味覚の秋

セリフ集はちょっとお休みして、秋の味覚と言えば、サンマですね。
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特に炭火で焼いたサンマは格別の旨さです。秋に炭火焼のサンマを食べるのは、私の年中行事の一つです。

(江坂)

2013年10月12日 (土)

これであなたも妊婦健診が出来る!?(セリフ集4)

エコー編の続きです。
「まず、これが赤ちゃんの頭の所で、ここでドキドキしているのが心臓です。」
と、言いながら赤ちゃんの頭の位置を確認します。骨盤位妊娠(逆子)の場合には普通分娩には大きな危険が伴います。ほとんどの施設で、骨盤位は帝王切開の方針です。また、水頭症、脳腫瘍、その他の頭部の病気が無いかチェックします。

心臓を見る段階では、先天性心疾患、胸水、肺腫瘍などの胸部の病気の有無を見ます。

では、心臓がドキドキしていなかったらどうするか・・・


その時には私の心臓がドキドキしてしまいますが、悲しい事に、妊娠中期以降でも子宮内で赤ちゃんが亡くなってしまう『子宮内胎児死亡』が稀に起こってしまいます。赤ちゃんの先天的な異常、胎盤や臍帯の異常、感染など原因は様々ですが、原因不明のものも多いです。

『分娩が近くなると赤ちゃんが動かなくなる』などと、お母さん向けの雑誌などに書かれていますが、ガセだと思っていた方が良いです。基本的に赤ちゃんが動くのは元気の印です。分娩直前まで元気に動いているのが普通で、動かないのは要注意です。定期健診で「最近、赤ちゃんが動きません。陣痛が近づいたのですか?」なんて言われた時に、既に赤ちゃんが子宮内で亡くなっているのを、我々産科医はしばしば経験しています。

更に続きます。(江坂)

2013年10月11日 (金)

これであなたも妊婦健診が出来る!?(セリフ集3)

今回からはエコー検査編です。

 

「では赤ちゃんを見て行きます。」
と、言いながら電子カルテの入力準備をして、診察ベッドに近寄ります。

 

「お腹を出しますね。」
と、言いながらタオルを除けてお腹を2−3カ所触り、赤ちゃんの体勢とお腹の張りをチェックします。レオポルド胎児触診法と呼び、正式には4段階に分けてお腹を触診するのですが、スピード重視で簡略化しています。

 

「エコーの検査になります。」
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と、言いながら、エコー(超音波画像診断装置)の準備をします。

 

長くなるので、本日はここまで。

 

(江坂)

 

 

 

 

2013年10月10日 (木)

これであなたも妊婦健診が出来る!?(セリフ集2)

それでは、セリフごとの解説です。まずは導入部分。

「こんにちは。〇〇さんが、今日は◯週と◯日まで来ました。」
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と、言いながら過去の経過をチェックします。基本的にはフルネームでの患者様確認が求められていますが、私の場合は姓だけ(まれに名だけ)さん付けで呼ぶ事が多いです。その方がフレンドリーな気がするからです。妊娠週数は「満」で計算するので、0週から始まりますが、妊娠月数は「かぞえ」なので0ヶ月から始まるのではなく1ヶ月から始まります。現場では基本的には月では無くて週で扱うので、電話で問い合わせる時などは、月で言うよりも週で言って頂いた方が話が通じやすいです。

更に、電子カルテを見ながら、「調子悪い所など、無いですか?」

これは魔法の言葉です。この一言に、お腹は張らないですか?胎動はありますか?出血は無いですか?おりものは増えてないですか?痛い所、かゆい所はないですか?風邪など引いてないですか?むくみは無いですか?食欲はありますか?睡眠は取れてますか?その他、調子悪い所など、無いですか?と、全てが集約されているので、何か調子の悪い所があれば、この時点で申告していただくと、その後の診察が捗ります。

次はエコー検査編になります。
(江坂)


2013年10月 8日 (火)

これであなたも妊婦健診が出来る!?(セリフ集1)

先日の『プレママわくわくセミナー』の内容を踏まえて、まずは、日々の妊婦健診で我々産科医は何を見ているか?をシリーズでご紹介します。私の外来を2回受診していただければ分かる事ですが、健診は大体決まったセリフで流れていきます。セリフを決める事で、見落としなどの抜けが無くなるのと、どの妊婦さんにも均質な診療を提供できるというメリットがあります。

最初に妊娠中期の健診での、私の標準的なセリフを公開してしまいます。このセリフを覚えれば、あなたも妊婦健診が出来るかも。

「こんにちは。〇〇さんが今日で◯週と◯日まで来ました。調子悪い所など、無いですか?」

「では赤ちゃんを見て行きます。お腹を出しますね。エコーの検査になります。」

「まず、これが赤ちゃんの頭の所で、ここでドキドキしているのが心臓です。」
「これがお腹の真ん中辺で、大きさを測って行きます。」

「こっちが太ももの骨で、性別はお聞きになっていますか?今日も◯の子ですね。」

「羊水の量もちょうど良くて、胎盤の位置も異常なしです。顔はこんな感じで、写真とっておきますね。今日の赤ちゃんの体重は〇〇〇gくらいです。大きさもちょうど良くって、他に見たい所など無いですか?」

「それではお腹を拭いてから、お話になります。」

こんな感じです。次からはセリフごとの解説の予定です。

(江坂)

2013年10月 7日 (月)

『プレママわくわくセミナー』でした

おはようございます、副院長の江坂です。
昨日は、苫小牧市民会館で行われた『プレママわくわくセミナー ハロー赤ちゃん!』において、『元気な赤ちゃんを産み育てるために』という演題で、講演を行いました。来ていただいた妊婦さん・お父さんはありがとうございました。
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産科医からお話しできる事として、妊娠・出産のリスクも織り交ぜながら、
・日々の妊婦健診で産科医は何を見ているか?
・情報過多時代の妊娠生活
・妊娠中の喫煙・飲酒
・妊娠・授乳中の薬のリスク
・妊娠中の体重管理
・マタ旅のリスク
・妊娠中の夫婦生活
・車中分娩の備え
といった内容を準備しましたが、時間の関係で『日々の妊婦健診で産科医は何を見ているか?』のパートしかお話できませんでした。続きは、こちらのブログで順次掲載したいと思います。

(江坂)

2013年10月 5日 (土)

講演準備

こんにちは、副院長の江坂です。

明日、苫小牧市民会館で行われる『プレママわくわくセミナー ハロー赤ちゃん!』において、『元気な赤ちゃんを産み育てるために』という演題で、講演を行います。

産科医からお話しできる事として、妊娠・出産のリスクも織り交ぜながら、
・日々の妊婦健診で産科医は何を見ているか?
・情報過多時代の妊娠生活
・妊娠中の喫煙・飲酒
・妊娠・授乳中の薬のリスク
・妊娠中の体重管理
・マタ旅のリスク
・妊娠中の夫婦生活
・車中分娩の備え
といった内容を予定していて、発表用のスライド作りをしている最中ですが、今現在で『日々の妊婦健診で産科医は何を見ているか?』のパートしか完成していません。こんな事で、明日は無事に講演が出来るでしょうか?

ちょっとドキドキしてきました。
(江坂)

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